明治16年創業の笹川餅屋がつくる、“本物”にこだわった笹団子

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歴史ある餅屋の看板商品“笹団子”

新潟市の西堀通りと鍛冶小路の交差点に立つ小さな店、笹川餅屋。明治後期にはこの場所で店を営業していたそうで、現在の建物は戦後間もなく建て直されたものなのだとか。今は15坪程の小さな土地に立っていますが、実は戦前は55坪もの土地があったそうです。戦時中に「戦車が通れるようにするため」という理由から鍛冶小路の拡幅が行われ、その際に土地が没収されて現在の広さになったという歴史があります。(ちなみに、実際に戦車が通ることは一度もなかったのだとか…。)

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お店のウインドウの中には5代目笹川悦生さんが各地で集めてきた、餅にまつわる民芸品が並んでいる。
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鍛冶小路に面する、歴史ある佇まいのお店。

そんな笹川餅屋は現在は6代目の笹川太朗さん(34)と、ご両親の3人で切り盛りをしています。お店の奥が小さな工場になっており、日々そこで蒸篭を使ってもち米を蒸し、蒸したもち米を石臼でつき、餅や団子、饅頭などを作っています。

その中でも一番の売れ筋商品は新潟の定番の郷土菓子“笹団子”。県外からの注文も多く、ここから全国へと発送しています。今回はそんな笹団子へのこだわりについてお話をうかがいました。

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笹団子は粒餡・こし餡から選べる。5個695円(税別)。
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5代目笹川悦生さんと、6代目笹川太朗さん。

農家の生活の知恵から生まれた笹団子

まずは笹団子の歴史について。
今でこそ笹団子は新潟の土産物として定番の商品となっていますが、明治時代はお店で買うものではなく、一般の家庭で作って食べるものだったとか。起源は諸説あるそうですが、農家がくず米を美味しく食べるために、米粉にして団子をつくったのが始まりで、特に5~6月の農作業が忙しい時期に手軽に食べられるので重宝されるようになったと言われているそうです。

笹に包んでいるのは、笹の殺菌作用で少しでも日持ちを長くするためにという生活の知恵から生まれたものでした。また、かつては砂糖が高価なものだったため、塩小豆や塩黄粉で味付けをして食べるのが主流だったのだそうです。

そんな一般家庭で作られる郷土食であった笹団子を、新潟みやげにしようという動きがあったのは新潟国体が開かれた昭和30年代のこと。笹川餅屋も所属している新潟市土産品協会へ、新潟市と新潟県から新しい新潟みやげの開発の依頼があったことがきっかけだったのだそうです。

実は、当時あまり日持ちがしなかった笹団子ですが、ゆでで作られていたものを蒸篭で蒸すことで水分活性値を下げたり、あんこの糖度を高めたりと試行錯誤を繰り返し、それまでよりも長めに保存できるようになり、土産物として認知・販売されるようになったのだそうです。笹団子を新潟名物へと高めた立役者の一人が、当時の笹川餅屋の店主でした。

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大正~昭和初期の笹団子づくりの写真。

本物の味を追求し、昔ながらの製法を守る

笹川餅屋がこだわっているのは「本物の味」。あらゆるものが効率化重視で作られてしまう現代において、笹川餅屋では、手間暇を惜しまずに素材選びから製法までを昔ながらのやり方で続けています。

「昔からのお客さんが多く、新潟市外や県外から定期的に訪れる常連さんもいらっしゃいます。そんな常連の方々を裏切らないように、変わらない味を提供したいと考えています」と話すのは6代目の笹川太朗さん。

新潟産のもち米とうるち米の米粉、そこに白玉粉、砂糖、信濃川や阿賀野川近辺で採れたヨモギの葉を混ぜて、石臼を使って団子生地を作り、餡は十勝産の大納言を銅釜で煮て、団子を包む笹は飯豊山、朝日連峰の麓で採れた熊笹を使用。団子に餡を入れて笹で包み、それを蒸篭で20~25分ほど強火で蒸して完成します。

素材によって味が変わってしまうため、同じ産地の材料を使うことを心がけているそうです。さらに、笹一つにしても地域差があり、阿賀や飯豊で採れる笹は幅があるので笹団子を包むのに適しているそうです。しかし、最近では山間部で笹取りをする人が少なくなっていることが課題でもあるのだとか。

ちなみに私は取材後に笹団子を購入し、自宅のわっぱ蒸篭で蒸していただきました。(ちなみに、当日なのでそのまま食べても美味しいです!)

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足立茂久商店(長岡市寺泊山田)の檜のわっぱ蒸篭で蒸す。そのまま食べる以上に豊かな香りに。

私がこれまで食べてきた笹団子は、団子がベタベタしていて大部分が笹にくっついてしまうものが多かったですが、こちらの笹団子はきれいに団子が外れます。爽やかな笹の香りと、風味がとても豊かな団子と餡。団子がしっかりと形を保っており、味と香りが強く、歯応えもしっかりしています。新潟にはたくさんの笹団子がありますが、この味のファンになり、遠方から取り寄せたり、わざわざ足を運んだりする人が多いと言うのもうなずけます。

ちなみに笹川餅屋では、数日たって固くなった笹団子は、蒸すだけでなく、金網で焼いて食べることも推奨しています。これは今度ぜひ試してみたいと思います。

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べとつかずにきれいに笹がむける。

餅屋としての餅へのこだわり

笹団子が有名な笹川餅屋ですが、毎朝5時からスタートするのは餅づくり。四角い蒸篭を何段も重ねて、蒸し上がったもち米を石うすでつきます。それを手早く加工するという工程を繰り返します。

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角型の蒸篭を何段も重ねてもち米や団子を蒸す。朝の忙しい時間帯は、この作業を手際よく繰り返していく。
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床下に設置された石臼と餅つき機。蒸しあげたもち米をここでついていく。

使用するもち米は、新潟県産のこがねもち。「箸で引っ張った時に伸びる餅がいい餅と思われがちですが、途中でぶちっと切れる餅が美味しいお餅なんですよ」(太朗さん)。米の給水時間は半日程度から、冬場は丸二日間つけることもあるそうです。そして、毎年米のできが異なるので、それに合わせて給水時間も変えていくのだとか。

美味しい餅を作り続けるというベースがあり、笹団子を始め大福や団子、饅頭などの製造も行っています。一貫しているのは実直に「本物の味」にこだわること。

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2013年に発売した饅頭セット「新潟米粉のかわいい友達」(1,200円税別)のトキをつくる太朗さん。トキの顔のパーツもすべて手作業でつくる。平成25年第12回新潟市土産品コンクールにて《ウマイ賞》を受賞。
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中身は白餡と大納言。他に、エチゴ兎(苺餡)、もちぶた(粒餡)、サドガエル(うぐいす餡)、エチゴモグラ(コーヒー餡)がセットになっている。
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年季の入った蒸篭は、笹川餅屋で欠かせない大切な道具。
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さまざまな文字や柄が入った焼印は何十年も使い続けている。

朝8時の開店後、できあがったものから順次お店に並べるそうですが、毎日20個しか作らないという豆大福は午前中に売り切れることも多い隠れた人気商品。「豆大福は固くなっても焼き大福にして食べると美味しいですよ」(太朗さん)。(※気温が上昇する夏季の8月現在は販売休止中。秋頃再開予定)

しかしながら、和菓子の業界自体は衰退しつつあるといいます。30年前100社あったという笹団子を作るお店は現在は30社程に減り、ここ数年でも後継ぎがいなくて店をたたむ店が後を絶たないそうです。

20代の頃、東京の食品メーカーで営業の仕事をしていた笹川さんは、30歳になる年に帰郷し6代目として後を継ぐことを決意。堅餅(もちを薄く切って乾燥させたお菓子)をチョコレートでコーティングした新しい菓子の開発や、商店街や企業のイベントで餅つきを行うなど、餅の活躍の場を広げる活動を行っています。

「餅つきを始めると、びっくりするくらい人が集まってくるんですよ」と話す太朗さん。今では珍しくなってしまった餅つきは、現代においても多くの人が心惹かれる日本らしさが凝縮したイベントなのかもしれません。笹川餅屋は笹団子をはじめとした郷土菓子を守り伝えるだけでなく、“餅”にまつわる様々な風習や文化を継承し、多くの人に楽しんでもらうことにも貢献をしています。

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笹川餅屋の包み紙。杵(きね)がシンボルマーク。

取材協力:笹川餅屋
住所:新潟市中央区西堀前通4-739
電話:025-222-9822
営業時間:8時~18時
定休日:不定休
URL:http://sasagawamochiya.sakura.ne.jp
MAIL:sasagawamochiya@chive.ocn.ne.jp

写真・文/鈴木亮平

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